第3回 安全の定義から考えること

今回のテーマは「安全の定義」です。

 

「安全」を辞書で調べると色々な定義が出てきますが、学術分野では「許容不可能なリスクがないこと」(IEC/ISO guide51(JIS Z8051))と定義されています。

 

この定義で重要な点は、"許容不可能な"と"リスク"という言葉です。

 

また、リスクは「目的に対する不確かさの影響」(ISO31000)と定義されています。

この定義からも重要なことがわかります。それは、"目的"と"不確かさ"という言葉です。

 

安全とリスクの定義から、2つのことが言えます。

 

1つ目は、安全は不確かさを内包していることです。

「今」という現時点では不確かさは殆どありませんが、「未来」には、特に先になればなるほど、不確かさが存在し、その状況に応じて安全という状態が変化するということです。

安全をリスクに基づいて考えるということは、「現在」において「未来」の安全がどのような状態かを選択するということだと言えます。

 

2つ目は、"許容不可能な"と"目的"という言葉より、「人」や「組織」、「社会」あるいは「時代」によって求められる安全の状態が変化するということです。

例えば、ある対象に関してA君が安全だと言うがB君は安全ではないと言うこと、A君が今安全だと考えたことが10年後には安全ではないと考えること、などが言えると思います。

自然科学的な視点で考えると、遠くへボールを投げた場合には計算上何mボールが飛ぶかが一意に決まるので、安全もある一つの見解に決まるのではと思われるかもしれません。つまり、安全=客観的である、という論理です。

しかし、この2つの言葉は客観性が低く、どちらかというと主観的な言葉であると言えます。

「主観的」というと人に依存してしまうので、「価値観」という言葉の方が適切かもしれません。

 

以上より、

『安全を考えるということは、価値観に基づいて対象の不確かさを扱うことである』

と言えると思います。

 

この考え方を共有化することができれば、対象の安全を考えるときに議論が発散せずに、安全を考えることがすんなりと進むかもしれません。