第4回 安全性評価の今後 〜その1〜

伊方原発の運転差し止めが13日の広島高裁で決定しました。

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ここでは、原発賛成・反対、差し止め賛成・反対の議論ではなく、2つの私見を書いてみます。

 

まず1つ目は、「約9万年前の阿蘇山の大噴火」が裁判で重要視されたことです。

阿蘇山の大噴火により、火砕流原発敷地内に到達する可能性が十分に小さいとは言えないとのこと。

この論理を極端に解釈と「原因」に着目していると考えられます。

リスク論では発生頻度をよく使うので、ざっくりと仮定を置き計算すると、大噴火の発生頻度は10万年に1回(10^-5)になります。

つまり、「10万年に1回発生する事象があるからダメ」と解釈することもできます。

一方で、平成27年における交通事故死者数(24時間以内)は、非常に残念ですが、4117人でした。

平成27年中の交通事故死者数 - 一般財団法人 全日本交通安全協会

日本の人口が約1億2千万人なので、交通事故によって死亡する頻度は年間約3×10^-5人となります。

こちらは「結果」に着目した頻度で、「毎年誰かが交通事故により死亡する頻度が約3×10^-5人である」と言えます。

 

どちらの頻度もおおよそ10^-5です。

 

毎年4000人程度の死者を確実に出す自動車を廃止にしましょうという議論は、殆ど聞いたことがないのですが、滅多に起きない大災害が起こる可能性があるから原発を差し止めましょうという議論が存在し、それが決定しました。

 

安全は社会の価値感によって変化するので、今回の判決は現在の選択として受け入れるしかありませんが、この判決を抽象化すると、全ての科学技術システムに該当する可能性がある一つの疑問があります。

それは、起こりうる事象の「原因」と「結果」のどちらをどのように扱えば、科学技術システムは安全になるか、ということです。

科学技術システムの安全はどう理解すれば良いのでしょうか?

課題はまだまだありそうです。

 

2つ目は次回に執筆します。

第3回 安全の定義から考えること

今回のテーマは「安全の定義」です。

 

「安全」を辞書で調べると色々な定義が出てきますが、学術分野では「許容不可能なリスクがないこと」(IEC/ISO guide51(JIS Z8051))と定義されています。

 

この定義で重要な点は、"許容不可能な"と"リスク"という言葉です。

 

また、リスクは「目的に対する不確かさの影響」(ISO31000)と定義されています。

この定義からも重要なことがわかります。それは、"目的"と"不確かさ"という言葉です。

 

安全とリスクの定義から、2つのことが言えます。

 

1つ目は、安全は不確かさを内包していることです。

「今」という現時点では不確かさは殆どありませんが、「未来」には、特に先になればなるほど、不確かさが存在し、その状況に応じて安全という状態が変化するということです。

安全をリスクに基づいて考えるということは、「現在」において「未来」の安全がどのような状態かを選択するということだと言えます。

 

2つ目は、"許容不可能な"と"目的"という言葉より、「人」や「組織」、「社会」あるいは「時代」によって求められる安全の状態が変化するということです。

例えば、ある対象に関してA君が安全だと言うがB君は安全ではないと言うこと、A君が今安全だと考えたことが10年後には安全ではないと考えること、などが言えると思います。

自然科学的な視点で考えると、遠くへボールを投げた場合には計算上何mボールが飛ぶかが一意に決まるので、安全もある一つの見解に決まるのではと思われるかもしれません。つまり、安全=客観的である、という論理です。

しかし、この2つの言葉は客観性が低く、どちらかというと主観的な言葉であると言えます。

「主観的」というと人に依存してしまうので、「価値観」という言葉の方が適切かもしれません。

 

以上より、

『安全を考えるということは、価値観に基づいて対象の不確かさを扱うことである』

と言えると思います。

 

この考え方を共有化することができれば、対象の安全を考えるときに議論が発散せずに、安全を考えることがすんなりと進むかもしれません。

第2回 リスク管理=リスクマネジメント?

第2回のテーマは、リスク管理リスクマネジメントについてです。

 

本来ならば、リスクを語るには「リスクの定義」について最初に言及するべきです。

しかし、書こうと思ったらなかなかの体力を使いそうなので、今回はまず以前まで疑問に思っていたこと、授業を通して学んだことをお知らせします。

 

テレビや雑誌、本などでリスク管理リスクマネジメントという言葉をよく聞くと思います。工学や経済など非常に様々な分野で利用されているので、皆さんもおなじみの言葉だと思います。

ところで、皆さんはそれらの言葉の違いを考えたことはありますか?

 

私自身最近まで殆どそれらの違いを考えたことがなく、恥ずかしながら同じ意味だと認識していました。しかし、とある授業でその違いがはっきりしました。

 

ここで、リスクという言葉は置いておいて、管理マネジメントについて言及します。

 

管理をYahoo!辞書で調べると、以下のように書いてあります。

1 ある規準などから外れないよう、全体を統制すること。

2 事が円滑に運ぶよう、事務を処理し、設備などを現存維持していくこと。

 

この辞書からは、私は管理=従えるというイメージを持ちました。

 

一方、マネジメントは次のように書いてあります。

1 経営などを管理すること。

 

と、管理については具体的に書いてありますが、マネジメントについては抽象的です。

そもそもマネジメントManagementと書くように英語を日本語にしたために、その意味合いが十分に理解されていないと考えられます。

マネジメントの意味をさらにインターネットで検索すると、「目的や目標に対する管理・評価・分析・対応・計画などの様々な要素を統合した言葉」という内容も見受けられます。俗に言う、PDCAサイクルのようですね。

 

したがって、マネジメントとは管理よりも幅広い意味を持ち、管理≠マネジメントと言えます。

つまり、リスク管理≠リスクマネジメント です。

 

様々な場面でそれぞれの言葉が現れます。管理とマネジメントを意識して書かれているかはわかりませんが、自分自身で認識する際に、違いをはっきりと意識して、その意味合いを認識して頂ければと思います。

 

で、リスクってなに?ということになると思いますが、それはまた今度書きます!

 

 

 

 

第1回 はじめまして

こんにちは。

大学で「安全」と「リスク」を勉強・研究しているものです。

第1回の内容は、このブログの趣旨についてです。

このブログを設立した理由は、

1.日々、勉強・研究している安全とリスクを世の中に伝えたい。

2.自分の考えをまとめ、構築していく。

 

それぞれの理由は下記の通りです。

●1つ目

昨今の安全へ対する要求の高まりに比較して、安全およびリスクをしっかり勉強している人が少ないのが現状だと考えています。そこで、大学授業や研究、学外活動で得た知識をできる限り世の中へ伝えていきたい。

 

●2つ目

1つ目でカッコいいことを言っていますが、

当の本人が勉強中であるために未だ答えという答えを持っていません...。

そこでこのブログを活用して自分なりの考えを書き、まとめていきます。

 

そんなことで上記の内容を簡単に、わかりやすくまとめて紹介したいと考えています。

 

ちなみに、このブログは週に1回ぐらいのペースで更新していくつもりです。めんどくさがりなので難しいかもしれませんが笑

また、このブログの責任は全て私が有しているので、もし何かありましたら、気軽にコメントしていただければと思います。